翠玉天宮日常活劇シリーズ

薄紅の憂鬱・その1

 薄紅は今日も憂鬱そうに、空の流れ行く雲を目で追っていた。たまに、面白い雲の形を見つけたときは名前を付けたりしたが、それもそろそろ飽きてきたようだ。
「ふぁ〜、つまんないなー!」
 少しいらいらしながらぼそっとつぶやくと、なにか面白いことはないかと部屋の周りを見渡した。そこにはあまり変わり映えしない、いつもの部屋の光景があった。そんないつもの光景には、薄紅の好奇心をあおりそうなものは何一つなさそうだった。
「ふにふに雲さがしやーめたっと!お部屋のなか探検隊するの!!」
 それを聞いた真紅はすかさずこう返す。
「部屋の中にあるものは、あんまりいたずらしちゃだめよ」
「ふぁ〜ぃ」
 いつもの真紅の言葉に、いつもの生返事で何気なく返した薄紅は、テーブルの上に置いてあったお気に入りのチビクマを見つけると、走り寄って首をつかんだ。


「チビクマもいっしょに行くの!」
 どうやらこの様子だと、探検隊のメンバーにチビクマが加わったらしい。そんなことはさておき、薄紅がテーブルの上で何か見つけたようですよ。
「うぅーっ、なにこれ・・・」
 チビクマを抱き寄せ、じーっと何かを見つめる薄紅・・・。


「なんか、似てるの?」
 すごく不機嫌な様子で、しばしにらみ合いが続いた後、最初に動いたのはやっぱり薄紅だった。
「にせものなんて、こうしてやるの!!」


 それを見かねた真紅がすかさず止めに入る。
「部屋の中にあるものは、いたずらしちゃだめって、あれほど言ったでしょう。いいかげんになさい!」
 諦めがつかない薄紅は、その何かを見つめて寂しそうにこうつぶやく。
「つ、次は手加減しないんだから!」
 まだいらだちの隠せない薄紅に、真紅はいつもの調子でこう言った。
「はいはい、帰るわよ」  とそっけなく抱き上げて連れ帰った。


 いつもに場所に戻るなり、真紅は
「みんなと話でもなさい。きっとその方がきっと面白いわ」
 薄紅を椅子の脇に座らせるとそういって聞かせた。


「ぅー、いつか必ず・・・」
「何か言ったかしら、薄紅?」
 こうして薄紅の憂鬱な日々はまだまだ続いてゆくのであった。

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