薄紅の憂鬱・その2
いつもは読まない本をまじめに読んでいる薄紅。それもそのはず、今日は薄紅が待ちに待った真紅のお出かけの日である。真紅の出かけようとしている姿を、本の横からチラッと覗き見していた。真紅はもう気が付いているらしく、すかさずいつもの調子で。
「じゃ、出かけてくるから、おとなしくお留守番よろしくね」
「ふぁ〜い」
薄紅も負けないくらいのいつもの返事で返す。出て行ったのを見計らって、空いている真紅の椅子めがけて走り寄り、チビクマといっしょに深く腰かけた。

「今日は何しよっか、チビクマ」
そんな薄紅に、ふといやな事が頭をよぎった。そう前の探検で見つけた何かである。
「そうだ!あいつを探すの、みつけてやっつけるの!」
そう言うなり、チビクマの手を引っ張って、また探検隊が始まった。しばらく部屋の中を探し回った薄紅とチビクマ。でも今日はなかなか見つからないようですよ。
「あれぇー?前はここにあったんだけどな・・・」
困り顔の薄紅を後目に、チビクマは冷静に部屋の中で探していない最後の場所を指差す。
「うん。まだパソコンのとこ探してなかったね。」
と、チビクマの頭をなでて、さっそくパソコンの机の上へと向かった。そして見回すなりがっかりした声で。
「やっぱりないよぉ、真紅おねえちゃんが隠したんだ!!」
すっかり落ち込んだ薄紅を慰めるチビクマ。ふとパソコンの画面の絵に目を向けた薄紅は、どこかで見たことがある顔に気が付いた。その絵は二人の顔が描かれていた。一人はすぐ分かったのだが、もう一人にまったく見覚えがなかった。
「一人は真紅おねえちゃんで、あともう一人は誰なのかな・・・?」

しばらく画面とにらめっこして、誰なのかを思い出そうといろいろ考えてみた薄紅。チビクマとも相談した結果。
「うん。よくわかんない人だけど、仲良さそうだし・・お友達にけってい!」
そうと決まったからには、何か考えたくなる薄紅。ぱっと表情が明るくなったところを見ると、さっそく何かひらめいたようです。
「お友達ごっこしよう!真紅おねえちゃん帰ってきたら、きっと驚くよ」
そう言うなり、チビクマを連れて麻世にさっそく相談。
「麻世おねえちゃん。お友達ごっこしたいの」

それを聞いた麻世はちょっと困った様子で聞き返す。
「お友達ごっこってなにかしら?」
「あのパソコンの画面の、んと真紅おねえちゃんの友達のまねっこするの。」
目で訴える薄紅。またかとあきれた様子で、仕方がなく画面に目を向けた麻世は、その光景を見て驚いた。
「麻世おねえちゃんも驚いたでしょ〜?真紅おねえちゃんならもっとおどろいて喜んでくれると思うの。ね、いいでしょ?麻世おねえちゃん。」
「私は驚いたのは、別の意味でなんだけどね。ま、いいですわ。面白くなりそうだし、お手伝いいたしますわ」
その言葉を聞いた薄紅は、うれしさ半分少し不思議そうな顔で。
「ありがとぉ麻世おねえちゃん。でも面白いの??」
「気にしないで、さっそく服でも作ってみますわ」
そう言うと、麻世は部屋の奥の生地置場に歩いていった。
真世の横でいっしょに話を聞いていた志津が、薄紅の頭をなでると。
「それでわ〜、薄紅ちゃんのぉ〜髪型も変えなくっちゃですね〜。こっちに来るのです〜。ふぁ〜」
と薄紅の手を引き連れて行った。こうしてなにげに薄紅改造計画が始まったのである。
「よし、これでできましたわ」
「私のほうもできあがりましたのですわ〜」

薄紅は、すっかり変わった自分の姿を見るなり。
「どう?似合ってるかなぁ?」
と、聞き返す。麻世は自信たっぷりに。
「薄紅に似合うようにアレンジしてみましたの。よく似合ってると思いますわ」
隣に寄り添って志津は。
「ふぁ〜、髪型も似合ってると思いますわ〜」
とすこしなげやりに言った。するとちょうどよく、真紅がお出かけから帰ってきた扉の音がした。
「ただいま。薄紅、おとなしくお留守番していたかしら?」
と、薄紅の姿を見るなり、とっさに身構えた。
「水銀灯!!・・・・・にしては、なんだか可愛いわ?あなた誰なの?」
ただならぬ雰囲気に、一人不思議そうにぼーっと立ちつくす薄紅。そして一言。
「真紅おねえちゃん?何か変だった??」

「薄紅なの!?」
薄紅が頷くと、真紅の顔に少し安堵が戻る。そしてあきれたように。
「薄紅ちょっとこっちに来なさい!!」
「えぇーーー!なんなの〜!!」
と、無理やり手を引いて部屋の奥のほうへ行く二人。そしてまた薄紅の憂鬱な日々は続いていくのであった。